|
■野上牛頭天王宮(田倉牛神社)
山陽本線の吉永駅を出て、その前を通る県道95号線を東に2キロメートルほど進み左折、並走してきた山陽本線の踏切を渡り山に向い少し歩くと、山裾に小さな鳥居の建つ古社「野上牛頭天王宮」、通称「田倉牛神社(たくらうしがみしゃ)」が建っている。 古代より「牛頭天王(ごずてんのう)」を祭神とし、流行病や天変地異の災害から氏子を守るとして勧進された宮で、江戸時代頃には農耕に使う牛馬の病気平癒を願う行事が行われていた。それが何時しか一般にも商売繁盛、五穀豊穣、家内安全、結婚や就職、入学などの願掛けへと広がり、地域では「牛神さま」として親しまれるようになった。
普段はまず人の姿を目にすることもない神社の境内だが、この日ばかりはお参りの人々で狭い境内が賑わいを見せる。 毎月5の日が小祭で、そのうち1月、5月、9月には大祭が行われるが、そのうち正月の5日は初詣と言うことで特に賑わい、恒例の「田倉牛神社・初大祭」が開かれる。 この日ばかりは、細く短い参道だけでは並びきらない、たい焼き、イカ焼き、焼き鳥、焼き肉などをはじめ、植木や刃物を売るたくさんの屋台が、稲刈りを終えた田んぼにも立ち並ぶ。そんな中には備前焼で焼かれた小さな牛の像を売る店も何軒かあり、奉納する像を選ぶ善男善女で賑わっている。
この古社には一般の神社に有るような本殿とか拝殿と言われる建物がなく、神職もいない。 お参りに訪れた人々は、石造りの牛(ご神体)が鎮座する「神座」と言われるところに向かいそれぞれが願をかけるのであるが、その参拝方法が変わっていて珍しい。 参拝・祈願する人はまずお供え用の牛馬像を社務所や屋台などで購入しあらかじめ用意し、それをご神体の鎮座する牛塚(神座)に奉納して参拝・祈願する。この時牛塚(神座)から、奉納され既に神性が宿っているとされる牛馬像を一体お借りして持ち帰り、自身の回りの神棚や台所などにお祀りする。持ち帰る像は古いほうがよりご利益があると言われている。
そうして大願成就したときや息災で迎えられたお正月などにはお礼参りをするのだが、この折には持ち帰った牛馬像と、お礼として新たな牛馬像を一体用意して奉納をすると言うものだ。 このようにお礼は「倍返し」するので、神座に積み上げられる牛馬像は年々増え、今ではその数30万体とも言われている。
■交通案内
■田倉牛神社 電車 山陽本線 吉永駅下車 東に徒歩約2.0Km 駅前から備前バス福石線 福石上行乗車 牛神社入口下車(10分.200円)すぐ (便数は極めて少なく、大祭時は運休の場合がある) 車 山陽自動車道 備前IC下車 国道2号線から県道等経由で12.0Km 和気IC下車 国道374号線から県道等経由で10.0Km
(c)2010 Sudare-M, All Rights Reserved. |