らと吉備 昔昔の 物語(桃太郎伝説)

 

■鬼の棲みか・鬼ノ城

 

 『百済の王子だった温羅(吉備の冠者)は、鬼ノ城に住みつき製鐵の技術を生かし、農具等を造って里人に与え喜ばれていたが、やがて悪事を働く鬼神になり、里人からは恐れられ、ついに都に訴えられてしまう。そのため都からは、征伐に吉備津彦が派遣されることに成る。』

 

 「鬼ノ城」は、吉備高原の最南端、周囲に肥沃な平野部を控え、古代吉備の国の中心部、交通の要衝にも近い位置に聳える標高400m程の鬼城山の山頂近くに有る遺跡で、国内でも稀なほぼ完成された古代山城とされている。

「白村江の戦い」に敗れた朝廷が、その後に備えるため全国各地に造らせた、幾つもの山城の内の一つでは・・と言われているが未だにその詳細は解明されてはいない。

 

岡山県や地元総社市では、全周2.8キロメートル、30ヘクタールとも言われる広大な城跡で発掘調査を進め、これまでに西門、角楼、土塁、水門などを復元しているが、調査は今も進められており今後も新たな発見が期待されている。

麓には「鬼ノ城ビジターセンター」を設け、お城に至る見学路や、その途中には展望台などを整備し、史跡自然公園として一般に開放している。

 

鬼ノ城

鬼ノ城

鬼ノ城

 

鬼ノ城

鬼ノ城

鬼ノ城

 

鬼ノ城

鬼ノ城

鬼ノ城

 

鬼ノ城

鬼ノ城

鬼ノ城

 

鬼ノ城

鬼ノ城

鬼ノ城

 

 

■吉備の中山

 

 『朝廷から派遣された吉備津彦は、吉備の中山に本陣を置き、片岡山に石楯を築いて、鬼ノ城に構える温羅と対峙すると、やがて二人の間で激しい戦いが始まる事に成る。』

 

 「吉備の中山」は古くから吉備の中心に位置し、人びとから崇められた標高170m程の小高い山で、吉備津神社脇から、山頂周辺に向けた遊歩道が整備されている。山の南峰には、吉備津彦の墓とされる中山茶臼山古墳があり、宮内庁が管理している。

 

吉備の中山

吉備の中山

吉備の中山

 

吉備の中山

吉備の中山

吉備の中山

 

吉備の中山

吉備の中山

吉備の中山

 

 

楯築遺蹟

 

 また対する鬼が石楯を築いて防御に備えたとされる片岡山は、吉備の西方にある地で、今日「楯築遺蹟」と呼ばれているところで、周辺は整備され史跡公園として公開されている。

遺蹟は自然の地形に盛り土をして整えられた弥生時代後期の墳丘墓で、現在知られているものの中では、最大級と言われている。

発掘調査では、朱を敷き詰めた木棺、首飾り、ガラス玉、土製人形、勾玉、管玉、鉄剣など多数の副葬品が出土している。

 

楯築遺蹟

楯築遺蹟

楯築遺蹟

 

 

 

■矢喰の宮と血吸川

 

 『吉備津彦が矢を射ると、温羅も大岩を投げて迎え撃ち、矢と大岩は激しく空中で絡み合い、尽く海に落ちてしまう。

なかなか勝負がつかないので、吉備津彦命は一度に二本の矢を番え射ると、一本は矢張り空中で大岩と絡み合い落ちてしまったが、もう一本の矢は見事に温羅の左目を射ぬくことに成る。温羅の目からは大量の血が流れ落ち、足元に溜まった血はやがて川に流れ出て、その川面や下流の浜までを真っ赤に染めてしまった。』

 

 当時この辺りは、吉備の穴海と呼ばれ、瀬戸内海が深く入り込む海であった。

この戦いでは温羅も矢を放って迎え撃った、と言う説もあるが、その落ちた場所が現在の「矢喰神社」で、境内には幾つもの大岩があり、地元ではこの大岩には当時付いた傷が残されていると伝えられている。

 

矢喰神社

矢喰神社

矢喰神社

 

矢喰神社

矢喰神社

矢喰神社

 

矢喰神社

矢喰神社

矢喰神社

 

その川こそ神社の脇を流れる「血吸川」で、今では清らかな水を流し、総社周辺の田畑を潤している。

またその下流域には辺り一面が真っ赤に染まったという「赤浜」と言う地名も残されている。

 

矢喰神社

矢喰神社

矢喰神社

 

 

■鯉喰神社

 

 『堪らず温羅は雉となって逃げ、吉備津彦は鷹となって追うが、温羅は更に逃げ、鯉に化身して川に逃げ込むと、吉備津彦も鵜に成って川に潜り、ようやく鯉を捉え喰いついた。

こうして、激戦の末捉えられた温羅は降伏したが、吉備津彦に首を刎ねられてしまう。』

 

その川が足守川かどうかは定かではないが、その川に近い矢部の地に村人たちにより祀られたのが「鯉喰神社」である。

古代墳丘墓の上に、江戸時代(元禄年間)になって社殿が作られたと言われていて、今では古道の通る古くからの住宅街の一角に静かに佇んでいる。

 

鯉喰神社

鯉喰神社

鯉喰神社

 

鯉喰神社

鯉喰神社

鯉喰神社

 

鯉喰神社

鯉喰神社

鯉喰神社

 

 

■鳴釜神事と吉備津神社

 

『晒された首が、夜に成ると不気味な唸り声をあげ続けるので、吉備津彦は家来の犬飼武に命じ、犬に喰わせてしまう。

しかしドクロとなってもその唸りは止む事が無かったので、吉備津神社の地下8尺の処に埋めてしまった。

それでも13年間唸りが止む事は無かったと言う。

ある夜、吉備津彦の夢枕に立った温羅は、「悪事を償うため、釜を唸らせて吉凶を占ってみせる」と告げたので、首を埋めた場所に釜殿を造り、祀るとようやく唸り声はしなくなった。』

 

 吉備津彦は、祭神として吉備津神社に祀られた。

そしてこの神社内の御釜殿には、温羅が祀られ、伝承に基づいた「鳴釜の神事」が今も連綿と行われている。

神社の本殿は、双翼入母屋造りと言われる特異な造りで、国宝に指定されている。

本殿前の石段下には、吉備津彦が温羅との戦いの折、矢を置いたとされる矢置き岩が残されている。

 

吉備津神社

吉備津神社

吉備津神社

 

吉備津神社

吉備津神社

吉備津神社

 

吉備津神社

吉備津神社

吉備津神社

 

 

■桃太郎と吉備の冠者

 

JR岡山駅を後楽園口(東口)に降り立ってみると、駅前広場に建つ、一つの像が目に飛び込んで来る。

肩に家来の雉を乗せ、両脇に猿と犬を従え陣羽織を着け、戦に臨む「桃太郎」の像である。

その駅前から城下まで真っ直ぐに延びる広い通りが岡山のメインストリートで、全国でも珍しい路面電車が走り、両側にはオフィスビル、ホテル、飲食店、量販店、専門店、高層マンション等が立ち並んでいる。

この延長約1Kmの通りを「桃太郎大通り」と言い、通りのあちこちには、雉・犬・猿の像が配置されている。

 

桃太郎伝説

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桃太郎伝説

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桃太郎伝説

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 一方駅の運動公園口(西口)に降りてみると、近年再開発された西口バスターミナルの一角に、上半身裸、筋骨の隆々とした体も誇らしく、ドッカと座り込んでいる「吉備の冠者」の像を目にすることが出来る。温羅をイメージした像である。

今では二人は、こうして睨み合うことも無く、背中を合わせ、静かに岡山の町を見守っているのである。

めでたし、めでたし。

 

桃太郎伝説

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桃太郎伝説

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■日本遺産・桃太郎伝説

 

このようにここ岡山には、古くから「温羅(鬼)」と「吉備津彦(桃太郎)」に纏わる「桃太郎(温羅)伝説」が残されていて、今も市民の間では親しく根強く語り継がれている。

そんな「桃太郎伝説」が2018年5月、文化庁が地域の有形、無形の文化財群にまつわるストーリーを認定する「日本遺産」、『桃太郎伝説の生まれたまち おかやま〜古代吉備の遺産が誘う鬼退治の物語〜』として認定された、

 

桃太郎伝説

桃太郎伝説

桃太郎伝説

 

岡山の定番お土産と言えば、“きびだんご”や“もも”で、これらも日本遺産認定の構成要素となっている。

もう一方の主人公の鬼はと言うと、今では岡山の暑い夏をさらに熱くする夏祭り「うらじゃ」として、鬼神「温羅」はすっかり市民権を得て親しまれている。

 

桃太郎もっと知りたいのなら、倉敷美観地区に有る「桃太郎のからくり博物館」を訪ねると良いだろう。

運が良ければ“ちくわ笛”を操る、名物館長に会えるかも・・・。

 

桃太郎伝説

桃太郎伝説G

桃太郎伝説

 

『ももたろさん♪ ももたろさん♪ お腰につけたきび団子 一つ 私に下さいな♪』

 

そんな童謡でおなじみの桃太郎は、伝説として全国各地に残されている。

香川県の沖合4キロに浮かぶ女木島は別名を「鬼が島」と言い、鬼が棲んでいたという洞窟が残っている。

岐阜県や愛知県には「桃太郎神社」があり、犬山市の宝物館には鬼の金棒なるものが展示されているらしい。

更に奈良県の田原本町は、桃太郎の誕生地を名乗るなど、全国に伝説の地は数知れない。

 

桃太郎伝説

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桃太郎伝説

桃太郎伝説

桃太郎伝説

 

桃太郎伝説

桃太郎伝説

桃太郎伝説

(写真:愛知県犬山市 桃太郎神社)

 

■交通案内

 

  ■ 吉備津神社

・JR電車 東海道新幹線岡山駅下車 吉備線に乗換(15分) 吉備津駅下車(徒歩 約0.7Km) ※1

・中鉄バス 天満屋BC・岡山駅前から稲荷山行き乗車(30分) 参道口下車(約0.4Km

 

  ■ 鬼ノ城

・JR電車 東海道新幹線岡山駅下車 吉備線に乗換(30分) 服部駅下車(約6.0Km 公共交通機関無し)

 

  ■ 矢喰神社

・JR電車 東海道新幹線岡山駅下車 吉備線に乗換(25分) 足守駅下車(約1.8Km) ※1

・中鉄バス 天満屋BC・岡山駅前から大井行き乗車(40分) 大井川下車(約0.5Km

 

  ■ 鯉喰神社

・JR電車 東海道新幹線岡山駅下車 吉備線に乗換(25分) 備中高松駅下車(約2.5Km) ※1

 

  ■ 桃太郎のからくり博物館

・JR電車 東海道新幹線新倉敷駅下車 山陽本線に乗換(8分) 倉敷駅下車 徒歩(約20分)

 

                 (※1 吉備線の総社駅と備前一宮駅にレンタサイクルあり、相互間で乗り捨てが可能)

 

 



 

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