日光市の中心部から中禅寺湖畔に到る、国道120号線の坂道を「いろは坂」と言う。
麓の馬返しから湖畔までに、ヘアピンカーブが48カ所もある事から名付けられたと言われている。
嘗ては有料道路であったが、今は無料の道路で、登りと下りがそれぞれ専用道路として供用されている。
華厳渓谷を挟んで、北側が下り専用の第一いろは坂、南側が上り専用の第二いろは坂である。
上りの第二いろは坂の途中には、明智平があり、日光東照宮から乗った路線バスは、駐車場に立寄る。
ここにはロープウェイが有り、凡そ3分で標高1373mの展望台まで登るらしい。
そこからは華厳の滝や中禅寺湖、男体山が一望で、特に紅葉の季節には賑わうという。
中禅寺湖 華厳の滝
流石に東照宮を中心とした観光地、中禅寺温泉バスターミナルの回りは、観光客で賑わっていた。
とは言え、バスターミナルに賑わいは無く、多くの観光客は広い駐車場に車を駐め、華厳の滝に向けて歩いている。
ここへバスで訪れるのは、どうやら極めて少数で、ほとんどが観光バスかマイカーのようだ。
華厳の滝の見物は、530円払って定員30名の大きなエレベータで100m程を約1分で降り、観曝台へ向かう。
エレベータを降り、真夏でも15℃程にしかならないと言う長い地下トンネルを潜ると観曝台にでる。
暫く歩くと、やがて目の前が開け、滝を遠望する2階建ての観曝台である。
風向きなのか、水しぶきがすごく、加えて夕暮れ時で、逆光になるせいか滝が良く見えない。
カメラのレンズにも水滴が付いてしまい、写真が撮り辛い。
それでも時折風向きが変るのか、水煙がサーッと晴れるときが有り、くっきりとその姿を見ることが出来る。
華厳の滝は、中禅寺湖の唯一の出口である大谷川に流れ落ちている。
高さ97m、落口幅7m、毎秒3tの落水は迫力があるが、水量は調整されたものらしく、この値は平均値である。
少ない時にはこの1/10程度となり、逆に多い時は50t以上になることもあるらしい。
華厳滝エレベータの回りには、観光客目当ての色々な店が並んでいる。
名物は華厳団子らしいが、幟旗に引かれ、注文を聞いてから揚げてくれる「究極のカレーパン」を食べてみた。
長さが27p有るのが究極らしいが、揚げパンにカレーが入ったようなもので、味が特別というのでは無さそうだ。
小腹を満たすには、充分に満足できるパンである。
バスターミナルの周りはさすがに有名観光地だけあって、日光名物・ゆば料理の店や土産物屋が軒を連ねている。
そんな店先を良く見ると、不思議な光景に気付く。どこの店先にも必ずと言って良いほど、犬が繋がれている。
「看板犬?」と店主に聞くと、「いや」と言って、目の前の駐車場の先を指さした。
駐車場と山裾の境辺りに、高さ2m程のフェンスがぐるりと廻らされ、それに沢山の野猿が群がっていた。
「やつらが、店先の土産品を狙っているので、それの見張り」だと言う。
この悪評高い野猿の群れは、時には窓の空いているマイカーの中まで襲うらしい。
小腹が落ち着いたところで、湖畔にある「日光レークサイドホテル」の立ち寄り湯に向かう。
華厳の滝からは、歩いて10分ほどの距離である。
ホテル前の庭園を抜け、中禅寺湖を眼前に望む地に、カラマツ材で造られた温泉棟が別棟で二棟建っている。
一つは大浴場である「湖畔の湯」、もう一つは貸し切りの家族風呂「あざみ」と「きすげ」である。
この湯の源泉は12q先の「日光湯元温泉」、そこからパイプで引湯していると言う。
80度ほどの源泉が、この間パイプの中でもまれ、冷まされて柔らかい湯に成るらしい。
天然の硫黄泉は、空気に触れると色が変わり、この日の浴槽にはエメラルドグリーンの湯が満たされていた。
かけ流しは気持ちが良く、大きな窓からは中禅寺湖が見通せ、心身の疲れを癒やしてくれる。
湖畔を渡る気持ちいい風を浴室に、と思いたいところだが、この辺りでは窓を開けるのは御法度である。
悪名高い日光の猿たちは、隙を見せればどこへも侵入を狙っているのだそうだ。
さかなと森の観察園
中禅寺湖畔から龍頭の滝に向かう途中の菖蒲ケ浜に「さかなと森の観察園」という施設がある。
国立の「水産研究・教育機構」という研究開発法人が管理する広報施設である。
元々は、宮内庁の孵化場として開設されて以来、130年余りの歴史を刻んでいるそうだ。
ここでは、主に河川や湖沼に住む、「さけ・ます類」についてその静態などを学ぶことが出来る。
湖畔に近い広大な森の中に、大小の飼育池が幾つもあり、ヒメマスなどが群遊している。
資料館や情報館等では、養魚場の歴史や、水産業の情報を知ることが出来る。
観覧池や観察魚道では、餌やり体験が出来、子供達には大変人気が高いと言う。
光徳牧場へ
更に国道120号を走り、右に折れ国道と別れ1.5キロほど入った所が光徳地区で、そこに光徳牧場がある。
その昔牧場を拓いた吉田徳三郎氏が、日光の「光」と自身の名前の「徳」の字を取り、名づけたと言う。
この牧場は約3万平方メートルの広さがあり、広大な牧草地では牛や馬が放牧され、のんびりと草を食んでいる。
散策路が整備され、入口付近にはホテルも立地していて、立ち寄り湯も出来る。
ここにはキャンプ場やレストハウスもあり、ハイキングや登山の基地にも成っているようだ。
売店では多くの観光客に混じってハイカーの姿もあり、お土産の品定めや雑談に余念がない。
ここで売られている新鮮で薄めていない牛乳や、アイスクリームはさすがに美味しく、評判の逸品らしい。
突然雲行きが怪しくなってきたかと思うと、大粒な雨が激しく降り出した。
広場にいた人びとが軒下を求めて走り出し、人のいなくなった広場のアスファルトを雨が激しく叩いていた。
そんな雨もすぐに止んで、青空が広がり始めると、広場に人が戻ってきた。
ほんの束の間の、移り気な山の天気である。
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