山形市の東部、蔵王連峰の西側の標高880m付近に位置するのが「蔵王温泉」である。
大自然に囲まれた高原地帯に、細い迷路のような道路が張り巡らされ、温泉街を形成している。
樹氷通り、高湯通り、湯の香通りなどで、お土産屋さんや、食事処などが立ち並んでいる。
周辺には数十軒の旅館やホテルが、さらに企業の保養施設等も立地し、その数を合わせると百軒を超えると言う。
大型のスキー場などの施設も多数有り、まさに高原の保養地、山岳リゾート地だ。
山交バスターミナルの近くに観光案内所が有り、その前から延びるのが高湯通りである。
温泉の中心部を、川幅の狭い酢川が流れていて、その流れの曲線に沿うように、緩やか登る通りである。
両側には、温泉旅館や食事処、お土産物屋さんが建ち並ぶメインストリートの一つだ。
温泉は、開湯1900年を迎えたらしく、至る所にそれを記念する幟旗が立てられている。
この道を少し行くと「南無阿弥陀仏」と書かれた大きな石碑が建っている。
この碑は村人や旅人の安全を祈願して建てられたもので、ここが旧高湯村の入り口に当るらしい。
湯治に訪れた湯治客が、もう一度温泉街を振り返った場所と言う事で「どんどんびき」と呼ばれている。
丁度この辺りで酢川の流れが小さな滝に成っている。
流れはお湯の混ざる暖かい川となっているらしく、辺りが見えないぐらい湯気が立ち込めている。
昔は子供たちが悪いことをすると、「ここから放り投げるぞ」と脅された場所でもあると言う。
当時の子供たちにとって、さぞ恐ろしい場所であったのであろう。
更に通りを進むと次第に標高も上がり、温泉街から蔵王の山並みが望めるようになる。
途中に雪を被った水車があるが、これは温泉の豊富な廃湯を利用して廻していたらしく復元されたものだ。
昔は、蔵王名物の「いが餅」の原料となる、うるち米やもち米を挽くのに使ってていたそうだ。
近くには、蔵王の麓、上山市生まれの歌人、斎藤茂吉ゆかりの「霊泉碑」も有る。
高湯通りを上り詰めると、その先にこの温泉のシンボルとも言える「酢川温泉神社」が鎮座している。
温泉街の外れに有り、赤く塗り込められた門灯籠の下から229段あると言う石段が、深い雪に閉ざされている。
雪に不慣れな者には、危なくてとても上れそうにない。
湯巡り
蔵王温泉は、日本武尊の東征の際、従軍した吉備多賀由により、今から1900年前に発見された。
江戸時代には、湯治場のみならず、蔵王権現参拝の登山口として、体を休める場所として賑わうようになる。
今日のような観光地として礎が築かれたのは、道路が整備された大正時代の事だそうだ。
昭和に入り、スキー場のオープンを期に、日本でも有数なマウンテンリゾートとして発展した。
高湯通りには共同浴場の一つ「下湯」があり、されに行けば「上湯」、通りを外れれば近くに「河原湯」も有る。
これらの湯は、日本有数の強酸性酸性泉で、硫黄を含んでいる。
切り傷、皮膚病、胃腸病に薬効があるとされ、肌と血を若返らせる美肌効果も有り、美人の湯とも言われている。
このほかにも「大露天風呂」「源七露天風呂」「新左衛門の湯」などが点在している。
足湯も三カ所有り、旅館やホテルなどでは、日帰り入浴できるところが沢山有る。
しかし、露天風呂では、この時期は雪が多すぎて営業していないところも有る。
「おそばか、ジンギスカンが美味しいです」
宿泊した宿のフロントで、「ここは何が美味しいの?」と聞くと、女性従業員は躊躇なく即座に教えてくれた。
兜のような鉄鍋で焼いて食べるスタイルの「ジンギスカン」は、その発祥の地を蔵王とする説が有るらしい。
元々、大正時代頃から山形地方では羊毛生産のための緬羊の飼育がおこなわれていた。
戦後、化学繊維が普及し羊毛相場が暴落、結果行き場の無くなった緬羊を食肉としての活路を見出す様になる。
それが「ジンギスカン」で、今では蔵王高原の看板メニューである。
県内産のラム肉を、各店自慢の個性豊かな特製だしで食べさせる店が温泉街にも多数ある。
「ジンギスカン」に」対して、もう一方の雄が「蕎麦」である。
寒暖の差が大きい山形地方では昔から「蕎麦」の栽培が盛んで、そば粉を使った伝統食は古くから知られていた。
江戸時代には既に、城下に「蕎麦屋」が営業を始めた記録も残されていると言う。
山形そばは、手打ちならではのこしと風味が特徴で、香り高い田舎そばからのど越しを重視した町方そばまで揃う。
ここ山形はそば王国と言われるほどだ。
さらにもう一つ、蔵王権現にお供えした縁起物の餅「稲花餅(いがもち)」も蔵王に来たら外せない名物だ。
柔らかめの餅で漉し餡を包み、小さく一口大に丸め、その上に黄色に色付けしたもち米を二三粒乗せる。
更に、蔵王で採れた熊笹の葉に載せたもので、稲の花に似ているから名付けられた。
蒸し上がりは非常に柔らかく、添加物は一切加えていないから、時間の経過とともに表面が固くなる。
日持ちがしないので、作ったその日に食べてしまう必要があり、どの店でも作り置きはしない売り切れ御免だ。
しっとり柔らかい餅に笹の風味が染み、程々の甘さは一口大という事も有りいくつでも食べられそうだ。
温泉街では店先で、この地方独特の丸いこんにゃくを、串にさし、煮込んだ「玉こんにゃく」が売られている。
練炭コンロに掛けられた大鍋から、店により味に多少の違いが有るが、醤油の良い匂いをさせて食欲を誘って来る。
アツアツを頬張ると十分な歯ごたえが有り、口の中に醤油の香がぷう〜んと広がり、なんだか懐かしい味がする。
レトロな旅館・おおみや
この日の宿は、高湯通りの上り詰めた上湯共同浴場の隣にある「おおみや旅館」である。
創業以来1000年の歴史がある、「大正浪漫香るレトロな旅館」がセールストークの宿である。
自慢は何と言っても豊富な湯量を誇る温泉で、勿論100%源泉掛け流しだ。
硫黄臭が漂い、湯ノ花が舞うお湯は、「美人になる温泉」と言われているそうだ。
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