最上川の流れる町

 

「さみだれを あつめてすずし もがみ川」

その昔、奥の細道を行脚した芭蕉は、曾良と共にこの地を訪ね、船宿・一栄亭に旅装を解いてこの有名な一句を残している。

 

 新幹線の大石田駅を出て、低い屋並みの町中を東に向かい15分ほど歩くと、緑濃い山並みを遙かに望み、川面を渡る風がなんとも心地良い最上川の川岸に行き当たる。悠々と流れる川は、今も満々と水を湛えその堂々とした流れは風格さえ感じられる。

室町時代の頃から始まったとされる舟運の、河岸場として繁栄した大石田は、江戸時代にはその最盛期を迎え、舟役所がおかれた程の華やかな歴史を秘めている。

 

最上川

最上川

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最上川

最上川

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最上川

最上川

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最上川

最上川

最上川

 

最上川

最上川

最上川

 

人口は八千人余りと言うから、さほど大きな町では無い。

今では町は、「そばの町」としても広く知られていて、環境省の“かおり風景百選”にも「大石田そばの里」が認定されている。

町中や駅中には手打ちそばを売り物にする店も多く、駅の観光案内所には店を巡るガイドマップも用意されている。

 

 

大正浪漫、灯りが懐かしい温泉

 

 一日4本しかない大石田駅前からのバス便は、1610分が最終で、それに乗り銀山温泉に向かう。

駅前から乗り込んだ客は少なく、そんな中病院の帰りと言う、土地のお年寄り三人のグループと乗り合わせた。

その早々、訛りの強い言葉で、「どこに行くのか」と尋ねられたので、「銀山温泉に行く」と答えると、「わしら、行ったことねぇなぁ」と互いの顔を見合いながら、欠けた歯を見せ大きな声で笑い合っていた。

 

 バスは5分ほどで「雪とスイカと花笠のまち」尾花沢の町に到着する。

ここは「花笠踊り」発祥の地として知られた町で、毎年8月には「花笠まつり」が行われている。

全国でも名うての豪雪地帯で、今では冬にやってくる厄介者の雪を逆手に取り、雪景色を売り物に「雪まつり」を開催し、観光にも力を入れていると言う。

 

銀山温泉

銀山温泉

銀山温泉

 

銀山温泉

銀山温泉

銀山温泉

 

銀山温泉

銀山温泉

銀山温泉

 

 乗り合わせたお年寄りのグループから、一人また一人とバスを降りて行く。

バスを降りるとそのままバス停に留まり、律儀にも振り返って、バスが動き出すまで手を振って見送ってくれる。

やがて最後の一人もバスを降りると、乗客は三人だけに成ってしまった。

生産量日本一と言われるスイカ畑を見ながら、バスは山の懐へと更に入り込んで行く。

 

 大石田から40分余りで、終点の銀山温泉に到着した。

周りに矢鱈と車庫が多いのは、温泉街の道は車の走行が出来ず、ここから先には入れないからだ。

銀山川のせせらぎに導かれ、緩やかな坂を少し下ると温泉街が開けている。

 

銀山温泉

銀山温泉

銀山温泉

 

銀山温泉

銀山温泉

銀山温泉

 

銀山温泉

銀山温泉

銀山温泉

 

銀山温泉

銀山温泉

銀山温泉

 

銀山温泉

銀山温泉

銀山温泉

 

 温泉街の入り口に架かる、しろがね橋を渡る。

石畳の歩道を少し歩いたその先の川沿いに、無料で使える足湯「和楽足湯(わらしゆ)」が有る。

そこから温泉街を振り返ると、緑濃い山肌をバックに銀山川を挟んでその両側に向かい合う木造の旅館群が見える。

そんな両側の旅館群を結ぶ多くの橋が川には架けられていて、そこは温泉街を見通す絶景のポイントとなっている。

川沿いの道にはノスタルジックなガス灯が建ち並び、懐かしい景観になお一層の彩りを添えている。

 

銀山温泉

銀山温泉

銀山温泉

 

銀山温泉

銀山温泉

銀山温泉

 

ギリギリまで軒を接して建ち並ぶ旅館の多くは、大正末期から昭和初期に建てられた洋風の木造多層造りの建物で、その独特の色合いと相まって、大屋根や庇が三層、四層に重なりあう姿や、木造りの窓や手すりの特異な景観が何とも趣のある風情を醸し、そこはかとなく懐かしさが漂ってくる。

 

やがて温泉街に静かな夜の帳が下り始めると、川に面した宿の窓々に、また道辺のガス灯に、オレンジ色の電燈が輝きだすと、その光で照らされた建物や町並みの雰囲気は一変する。まさにこれを大正浪漫と言うのであろうか。

懐かしい昭和の、暖か色の、ロマンチックな灯りに彩られ、格調高い建物群が更に煌めきを放ち、より一層気高く見える。

 

銀山温泉

銀山温泉

銀山温泉

 

銀山温泉

銀山温泉

銀山温泉

 

温泉街の川沿いの道を通り抜けた一番奥に有る、国指定史跡の銀鉱山跡一帯は、「銀山白銀公園」として整備されている。

白銀の滝を中心とした周辺は、「洗心峡」と言われる景観の地で、ハイキングコースなども設けられている。

16世紀に発見されたこの地の銀鉱山は、江戸時代には公儀山として幕府直営の代官所が置かれ、島根の石見、兵庫の生野とともに三大銀山の一つとして栄え、盛時には二万人を超える人夫がいたと言われている。

 

 

おしんこけし

 

 温泉街の一番奥に、鳴子系のこけし工人、伊豆護さんの「伊豆こけし店」が有る。

黒々としたおかっぱ頭、ぱっちりと見開いた目が愛らしい特徴的なこけしは、系統的には鳴子系であるが一般的にはその地名を取って銀山こけしと言われている。

 

 昭和584月に始まったNHKの朝の連続テレビ小説「おしん」の中で、奉公に出されるおしんが、銀山温泉で働く母親から買ってもらったこけしがこの銀山こけしだ。ドラマはおしんの生涯を通じて、一本のこけしを心の支えとして描かれている。

今では、そんな生きざまに因んで赤ちゃんが生まれた時に、その体重・身長が同じ大きさの“おしんこけし(誕生こけし)”が造られる事も有ると言う。

 

銀山こけし

銀山こけし

銀山こけし

 

銀山こけし

銀山こけし

銀山こけし

銀山こけし

 

 

 



 

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