日本一の飾り山車

 

 「随分と山奥ですよ、ビックリされるでしょうね。」

昨日鳴子温泉を訪ね、鳴子のこけしを堪能し、とある町中のこけし店に立ち寄りその帰り際、「明日は肘折温泉にある肘折系のこけし工人の工房を訪ねる」と、店主である工人に話した時の事である。

 

 新庄の駅に降り立った。明るくてきれいな駅の構内だが、多くの人々が行き交い思いの他賑わっている。

駅構内の観光案内所で聞くと、それもそのはず折しも町では「新庄まつり」が行われていると言う。

国の重要無形民俗文化財にも指定されている、山車が町中をパレードする「本祭り」が昨日済んだところらしく、今日はその「後祭り」が行われているのだと教えてくれた。(近頃ユネスコの無形文化遺産の指定を受けた。)

 

新庄まつり

新庄まつり

新庄まつり

 

新庄まつり

新庄まつり

新庄まつり

 

新庄まつり

新庄まつり

新庄まつり

 

新庄まつり

新庄まつり

新庄まつり

 

新庄まつり

新庄まつり

新庄まつり

 

 今から260年余り前の事、凶作に苦しむ領民の志気を鼓舞しようと時の藩主が始めたとされる祭りは、町内の若連が1カ月余りをかけ精魂を込めて作り上げた山車を子供たちが引いて町を練りまわる。

山車の造作は歌舞伎の名場面や歴史上の古事を再現するなど様々で、夜には照明も入り幻想的な歴史絵巻を繰り広げると言う。

今日は、前日パレードを終えた各町内の山車が、市街中心に勢ぞろいし展示山車を見学できる日だ。

 

 

肘折の温泉街

 

 新庄駅前を出たバスは市街地を抜けると、しだいに山間の道に入り込んで行く。

国道458号を40分ほど走り、やがて肘折トンネルを抜けると車窓からは、遥かに名峰月山を望む山間の裾に、小さく開けた盆地に身を寄せるように犇めく集落を見下ろす事が出来る。

バスがその集落に向け、九十九折のかなり急勾配な道を下って行くと、やがて肘折の町だ。

 

 バスは20軒余りの旅館や土産物屋が軒を並べる肘折温泉の町中に入ってきた。

狭い路地のような通りの両側には、郵便局の瀟洒な建物や、間口を開け客を待つ旅館、土産物店が犇めいている。

店先には道路にまで迫り出してお土産が並べられ、更に店舗の上廂からはテントが飛び出しているので、通りは相当狭くなっているように見える。おまけに対向の乗用車も多い。「こんな狭いところ、このバスで行かれるの」と心配してしまうほどに道は狭い。

圧巻は旧郵便局前のクランクで、バスは慣れた巧みなハンドルさばきで切り抜け進んで行く。

素人のいらぬ心配を余所に、新庄からはおよそ1時間程でバス待合所に到着した。

 

肘折温泉

肘折温泉

肘折温泉

 

肘折温泉

肘折温泉

肘折温泉

 

肘折温泉

肘折温泉

肘折温泉

 

肘折温泉

肘折温泉

肘折温泉

 

肘折温泉での今晩の宿は銅山川に架かる永代橋を渡り、川沿いに少し上った肘折ダムの下にある一軒宿だ。

「日本秘湯を守る会」の会員旅館「葉山館」で、大正2年に創業した木造4階建て温泉自慢の宿である。

ここの内湯は70度の源泉に、山の湧水で温度調整をするかけ流しの湯だ。ナトリウム塩化物・炭酸水素塩泉は、入り始めは炭酸がピリピリと肌を刺激するが、ゆっくり湯に浸かれば温まり、湯ざめをしないのが特徴だと言う。

 

肘折温泉

肘折温泉

肘折温泉

 

肘折温泉

肘折温泉

肘折温泉

 

肘折温泉

肘折温泉

肘折温泉

 

肘折温泉

肘折温泉

肘折温泉

 

 温泉街には、三つの共同浴場がある。その内の一つ「上の湯」は訪れたこの日は生憎の改装工事中だった。

しかし中の浴槽は大丈夫で入浴は可能だが、浴室には鍵がかけられているというので宿の女将に入口の鍵を借り訪ねてみる。

幸い広い浴槽に入浴客は一人もいず、一人の専用風呂で、思いっきり手足を伸ばして、ゆっくり至福の湯を楽しむ事が出来た。

 

 温泉街では夜明けと共に、朝市が開かれる。

地元でとれた新鮮な山菜やキノコ、野菜や漬物など、旬の味覚が並ぶのは、かつては湯治客が多かった事の名残らしい。

浴衣を着た泊まり客や湯治客などが、売り手のお母さんたちと賑やかに声を掛け合って、値段の交渉であろうか。

誰もが買い物を楽しんでいる風情で、何かほのぼのとした暖かいものを感じる朝市である。

 

 

肘折のこけし

 

肘折温泉の歴史は古く、遥か9世紀ころには温泉が発見されていたと言う。

この温泉地はその昔には、月山への山岳信仰の登山口として大いに栄えた歴史もあったそうだ。

そのため登山者と、湯治場として湯治客が大勢集まった事から、その土産にとここでこけしが作り始められたらしい。

 

 温泉街の外れ、町を見下ろす小高い丘の上に、今では唯一肘折こけしの系統を伝承する工房がある。

かつては三人いた工人も、今では工人・鈴木征一さんが、たった一人になってしまい、それでも尚伝統を守り続けている。

ここでは、製品の購入が出来ると同時に、こけしの絵付け体験も出来るらしい。

 

肘折こけし

肘折こけし

肘折こけし

 

肘折こけし

肘折こけし

肘折こけし

肘折こけし

 

肘折こけし

肘折こけし

肘折こけし

肘折こけし

 

 胴のどっしりとした形は、鳴子系の血を引いているが、それと若干違うのは中央にくびれが無い事だ。

直胴には黄色で地を敷き、その胴には重ね菊と言われる菊の模様や、撫子等の草花が描かれることが多い。

顔は優しく微笑むようで、赤い紅を差したおちょぼ口がなんとも愛らしい。

中にはくり抜かれた頭部に小豆を入れ、振るとカラカラ音がするものもあり、これは子供の手持ちおもちゃの名残らしい。

120年以上に渡り、変わることなくほぼ原型を留めるのも、肘折系の大きな特徴と言われている。

 

 

 



 

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