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■ 感動的な挙式
ウルワツは、インド洋の荒波が打ち寄せる断崖絶壁の前に広がる綺麗なビーチが知られている。 また絶好のサーフィン・ポイントとしても有名で、近くにあるウルワツ寺院と共に、バリでは人気の観光地だ。 今回のバリ島旅行のメインイベントは、そんな地にある「ブルー ポイント ベイ ヴィラズ アンド スパ」での挙式である。
崖の上に建つホテルからは、崖の下に広がる岩場や砂浜へ向けて階段が整備されているらしい。 海と繋がったように見えるインフィニティープールは、ホテル一の絶景ポイントとして評判の場所で、そんなプールとインド洋を臨む高台にはチャペルがある。
折角の場所なのに残念ながら此処では、観光の時間は全く割かれていない。 今日一日は、そんなチャペルでのウエディング、インド洋に沈む夕陽を背にしたビーチでのフォトツアー、その後のレセプションディナーなど、全ては決められたスケジュールに基づいて、新郎・新婦の後に従うのみである。
結婚式は、目の前にインド洋の碧い海が広がるガラス張りのチャペルで、家族だけで細やかに行った。 その後はビーチに出て、沈む夕日を取り込みながら、ケーキカットなどが厳かな雰囲気の中で和やかに行われた。 その後のディナーは、ガムランの生音をBGMにして、インドネシア料理に舌鼓を打った。 会場に華を沿えてくれた、民族衣装を身に纏ったダンサーからは、バリダンスの手ほどきも受け思わぬ一時を過ごした。 どれもこれも初めてのことばかりである。
最終日。 全て予定された行事が滞りなく終わり、買い物をした店に併設されたレストランで夕食を済ませ、夜遅くホテルに戻る。 預けてあったトランクを受け取り、空港への迎えの車が来るのをロビーで待つ事になる。
直ぐ横のソファを占めた家族連れも同じ便を待っているのか、僅かな時間を使って荷造りに余念が無い。大変そうだ。 トランクのファスナーが閉まらないのか、お父さんがトランクの上で全体重をかけ、お母さんがファスナーを閉める共同作業で格闘している様子だ。ソファの上にはまだ幾つもの買い物袋があり、もうトランクには入らないから手で下げていくのであろう。 いずこも同じなのだと、思わず苦笑いをしてしまう。
■ いよいよ帰国
約束の時間に成っても迎えの車がなかなか来ない。 飛行機の時間までにはまだ十分に余裕もあるので、そんなに心配はしていないつもりでもやはり知らない土地での事で、どこの誰と連絡を取れば良いか解らないだけに不安は募るばかりだ。
じりじりしながら待つこと30分ほど、遅れて来た迎えの車で空港に向い、ターミナルに入る。 現地ガイドの「また来てください」の言葉に、「ああもうこれで帰るのか・・・」と、惜別の情が胸を締める。 手を振ってガイドと別れを惜しみ、帰国便を待つ多くの人混みに混じり、出国ゲートに向う。
機は予定通り離陸した。明日の朝には関西空港に到着する筈だ。 深夜の便とあって旅なれた人達は幾つかのシートを独り占めし、早々と横になり毛布を被り寝る体勢に入っている。 少しは眠っておかなければ・・と目を瞑るが、初めての体験の数々に、今になっても興奮が冷めやらないのか中々寝付かれない。
それでも少し眠ったのであろうか、気が付くと少し開けたブラインドの下が赤く染まっている。 もう少しブラインドを開け、外を覗くと、真っ赤な太陽が雲を茜に染めながら今正に昇ってくるところだ。
暫くして機内に灯りが戻り、慌ただしく朝食が配られる。 朝食が済む頃、空港到着の案内が始まると、到着に備え機内がざわつき始め、シートベルトを締めて着陸に備えることになる。 窓の外を見ると、いよいよ着陸の態勢に入り高度が下がったのか、機は雲の中で窓からは何も見えなくなっていた。 やがて更に機首を下げ、雲を抜けると、鉛色の隙間から大阪の街並みが霞んだように見えてきた。そして着陸だ。 何の懸念もなく定刻、機は梅雨の雨がしとしとと降る、関西国際空港の滑走路に滑るように到着した。
飛行機嫌いが高じて、外国旅行よりは国内旅行派を自負する身が、7時間余りのフライトを余儀なくされた今回のバリ旅行だが、心配するほどの事もなく無事終える事が出来た。 ただ空港到着早々に、悪質なポーターにまんまとしてやられてしまい、この先どうなる事かと不安がよぎったが、その後は、全くと言って良いほどに何事も無く、何の懸念も無く、全てが順調に進み、何だかアッと言う間の一週間であった。
ツアーを案内してくれた現ガイドは、決して上手な日本語とは言えなかったが、何時も親切で、精一杯尽くしてくれる直向さがひしひしと伝わってきた。多少時間のルーズさはあったものの、何処へ行く時も同行してくれるから、行った先々で不自由を被ることは殆ど無かったこともありがたかった。 数々の初めての体験は、どれもこれも興味深く感動的で、そんな中、お店での現地人たちとの片言のやりとりも楽しかった。 外国旅行も悪くはないな・・・、そんな新たな思いを乗せて、帰路の高速バスに乗り込んだ。
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