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■ パサール・ウブド
サレン・アヴン宮殿前に広がるパサール・ウブド(ウブド市場)は、旅行者も気軽に立寄れる市場らしい。 当然日本人客も多いようで、その為売り手も日本語の数字位は理解している人が殆どらしく、買い物で困る事はないと言う。 「この市場の商品には値札が付いていない。値段は交渉で安くなるから決して言い値で買ってはいけない」 それから、「偽物にも注意して」と車を降りる前、現地ガイドが買い物の指南をしてくれた。
車やバイク、街を歩く観光客で賑わう通りを一歩入るとそこは市場だ。 狭い通路を挟んで両側には、極彩色の民芸品やら織物、帽子、籠から絵画、彫り物、ブランド品の時計やバック(本物かどうかは解らない)など、ありとあらゆる商品がびっしり積み上げられ、その狭い隙間を縫うように売り子や観光客が犇いている。 雨上がりの日差しに立ち昇る湿気と、人の多さとその息遣い、山のように積み上がった圧倒的な品数と商いの熱気が掛け合わされ、それが独特な市場の匂いと相まってむせ返るように通りが暑い。
市場で異国情緒溢れる、額に入った絵を見つけた。 手にとって「いくら」と日本語で問うと、女の店主は人差し指と中指を顔の前に立てて突き出した。 恐らく20万ルピアの意で有ろうが、「高い!」と呟いて手に取った商品を元に戻そうとすると、店主はやおらポケットから電卓を取り出し、「18」と打ち込んでこちらに差し出した。 私は品物を置いて、代わりに人差し指を一本だけ立てて店主に向けた。店主は首をすくめて、「とんでもない」と言いたげに笑ったので店を出ようとすると、店主が何か言いながら、再び電卓をこちらに向けてきた。 そこには「15」と言う数字が打ち込まれていた。私はその電卓を手に取り、「13」と打って店主に返した。 店主は、電卓を見ながら現地の言葉でなにやら二言三言呟いたようで、私には意味の解らない言葉だったが、最後の「OK」を聞き逃す事は無かった。
■ 社長さ〜ん
「鈴木さあ〜ン」「佐藤さ〜ン」突然の日本語で呼ぶ声に、思わず声のする方を振り返って見た。 そこには、店先で土産を売る男がこちらを向いて笑いかけている。バリに来て、観光客、取り分け日本人が良く立ち寄る観光地のみやげ物屋では、こうして比較的日本人に多いとされる“姓”を呼んで、客の気を引こうとすることも多いらしい。 自分の姓ではないが、日本語での呼び掛けに気になって振り返ると、極めつけは「社長さあ〜ン、これ買って!」と来る。 彼らは、“社長”と呼ばれ、悪い気がしない日本人の性癖を見抜いているのだ。
これまでに立ち寄った観光地では、車を降りると現地の土産物売りが直ぐに纏わり着いて来る。 「これ、全部で1,000円」と、何本ものブレスレットや、何枚ものTシャツを鷲掴みにして差し出してくる。 ヒンドゥー遺跡「ゴア・ガジャ」では、なにやら大きな木彫りの置物を持った男たちが数人近寄ってきた。 黒っぽい黒檀のような彫り物で、多少興味を引かれたが、現地ガイドが全く意に介した様子もなく、先に行ってしまうので、ここは置いてきぼりを食ってもいけないと、横目で未練たらしく見遣りながら、足早にガイドに追いついた。
こうした観光地に来ると、どうやらお土産は、1,000円単位の纏め売りが多いらしい。 品物の品質はよく解らないが、値段は確かに安いので心を動かされる事も多いのだが、現地ガイドは「相手にするな」と言う。 一人でも相手にしようものなら、我も我もと取り巻かれ、終止が付かなくなるからだと言う。
■ アジアン雑貨シャトル
それでもこんなやり取りをしながらの買い物は、その物の値、品質とは関係なく結構楽しいもので有る。 「この店は、値切っては駄目だ」「ここは纏めて買うとぐっと安くなるので、レジでは全員の物を纏めて出せ」とか、「値札よりは安くなるから、交渉した方が良い」とか、買い物に寄る度に現地ガイドが、お店毎の特徴をこまめに教えてくれるから心強い。
バリ最後の日は12時前にホテルをチェックアウトし、買い物ツアーが計画されている。 昨日も銀細工の店や、小物雑貨の店などこれまでに何件もの店に立ち寄り、散々に買い物で散財しているので、もうどうでも良いのだが「アジアン雑貨シャトル」と銘打った旅行会社の無料サービスが付いているのだという。 この後車に乗せられて、アロマグッズの店、籠専門店、陶器専門店、それにバティック専門店を廻ることになっている。
■ 小銭の使い道
バリでは商品の値札は、現地通貨であるルピアで表示されているが、中には米ドル表示する店も少なくない。 さすがに円表示の店を見かけることはないが、支払いとなると、米ドルでもルピアでも日本円でも“OK”と言う店が多い。 例えば、ルピアで支払うと殆どの場合、合計した結果の小さな端数は切り捨て、まけてくれる。
しかしホテル内のリゾート・ブテックではそうは行かない。 商品は米ドル表示されているが、ルピアで支払う時は余り問題無いが、米ドルや円で支払うと、そのおつりはルピアとなる。 このおつりが困りものだ。何せ小さな端数が出るから、当然おつりは小額の硬貨で貰うこととなる。 500ルピア以下の小額コインと成ると、スーパーマーケットにでも行って買い物をするなら別だが・・あまり使い道が無い。 インドネシアにはチップの習慣は無いとされているが、それでもホテルの枕銭やポーターやベルボーイには、5,000〜10,000ルピアが目安とされているから、彼らへのチップとして使うこともできない。 結局これらの小額コインは、使うことも、両替する事もなく記念に持ち帰る事になる。
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