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名古屋の味噌文化と「なごやめし総選挙」
名古屋には「なごやめし」と言われる食文化が脈々と息づいていて、その代表的な物が味噌文化である。 「味噌」抜きで名古屋の食は語れない、と言われる程、名古屋と「味噌」は切っても切れないものだ。 とは言え近頃では、それにも引けを取らない「名古屋ならでは」の「名古屋らしい」食も現われている。 関東とも関西ともひと味違う、「なごやめし」は今俄に注目を集めている。
2022年の1月〜3月にかけて、「一億人のなごやめし総選挙2022」が行われた。 今回は28種類がエントリーされ、一人一回八品まで、これぞ「なごやめし」を選んで投票をした。 総選挙には15.5万人程が参加、総数62.9万票を投じ、結果見事1位に輝いたのが、「ひつまぶし」であった。
鰻の蒲焼きを短冊状に切り、おひつに入れた熱々のご飯にもったのが「ひつまぶし」である。 贅沢なごやめしの王道と言われている「ひつまぶし」は、一杯で三度の異なった味が楽しめるのがウリだ。 最初はそのまま茶碗によそって、二杯目はそれにネギや刻み海苔わさび等の薬味を添えて頂く。 そして、最後は出汁かお茶をかけて、お茶漬けのようにしてサラサラと頂くのである。
味噌文化を代表する「味噌カツ」が2位、「味噌煮込みうどん」は4位に入った。 更に「どて煮」は13位と健闘し、矢張り味噌文化は根強い支持を得ている。
とんかつに赤味噌仕立ての「味噌だれ」を合せたのが「味噌カツ」である。 元々は「どて煮」のつゆに、串カツを付けて食べた屋台料理が始まりといわれている。 「味噌だれのとんかつ」は、バリエーションが豊富で、各店舗が独自の味付けやスタイルを競っている。
タレは味醂や胡麻などの調味料と調合して作り、今では洋食風にマヨネーズや辛子と合わせたものもある。 それをカツにかけるのだが、カツだけにかけるのや、丼飯の上にカツをのせそれにかける等する。 或は別皿で提供したタレに、カツを浸して食べるなど店によりその提供方法は様々だ。
ぐつぐつと煮立った土鍋で食べる、味噌仕立てのうどんが「味噌煮込みうどん」である。 多くは八丁味噌をベースとしたつゆで、少しかみ応えのある固麺を煮込んだ鍋焼きうどんである。 熱々を土鍋の蓋で冷ましながら食べるうどんは、つゆが良く絡み濃厚なコクのある味わいが楽しめる。 かしわやネギ、シイタケ、餅などのトッピングとも相性が良く、後味もさっぱりとしている。 冬だけの食べ物ではなく、夏場でも強めに冷房の効いた店で、汗をかきながら啜るのが通と言う。
名古屋の味噌文化で絶対に外せないのが、昔からの定番「どて煮」である。 味噌おでんの一種と言われ、「どて焼」、「どて」とも言って、主に居酒屋メニューとして親しまれてきた。 一般的には、大きな鉄鍋の内周りに八帖味噌を盛り、その溶け出したタレの中で、豚や牛の内臓を煮込む。 とろとろになるまでを長時間煮込んだもつ煮のことで、串刺しにしたり、そのまま器に盛って提供される。
昔からの定番「きしめん」は9位、「えびフライ」が10位と健闘した。 「きしめん」のルーツはキジ肉を入れた麺で、尾張藩祖以来の、この地方の伝統料理である。 江戸時代庶民の間に広まったが、流石にキジ肉は贅沢で、代わりに油揚げが使われた。 たまり醤油をベースに魚介で出汁を取り、独特の平たい麺に油揚げや花鰹、ネギ、かまぼこ等が乗る。 今では名古屋駅のホームでも手軽に頂く事が出来る人気の定番メニューだ。
個人的には、県内広い地域で愛食されている「菜飯と味噌田楽」や「味噌おでん」が推しだ。 縦長の大きめの湯飲みに味噌だれを入れ、大鍋で串刺しのこんにゃくと共に温めるのが「味噌おでん」だ。 熱々になったら、こんにゃくを味噌だれに突っ込んで、たっぷりとみそを付けて頂く。 今でも幼い頃を思い出す、切ないほどに懐かしい、ふる里の味である。
また「串カツ」や「田楽」は、市内にも昔からの店が今も営業を続けているはずだ。 遊園地や観光地などには、醤油だれの「みたらし」がいまだ健在ではなかろうか。 これらの大好物は「なごやめし」と言うよりは、「あいちめし」と言った方が良いのかも知れない。 それでも、今回ノミネートされなかったのが、とても残念である。
近頃人気の「手羽先」が3位、「天むす」が5位、「小倉トースト」が6位、「名古屋コーチン」が8位だ。 「天むす」は、元々は三重県のある店舗の賄い飯が発祥と言われているが、今ではすっかり名古屋に定着した。
愛知県内の喫茶店で広く提供される軽食が「小倉トースト」で、名古屋市内栄の某喫茶店が発祥である。 今では全国展開する喫茶店の名を冠した、家庭用パック詰めの「あん」が、スーパー等でも売られている。
面白いのは「モーニング」の7位で、これは料理の種類では無く、食事提供の形態である。 多くの食に混じり上位に入るのは、喫茶店文化、特にモーニングサービスが根付いた名古屋らしい。 お土産では「ういろう」が15位、「えびせんべい」が22位、「守口漬」は28位であった。 個人的には、板角総本舗のえびせんべい「ゆかり」が、名古屋土産では外せない定番となっている。
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